免許取得費用:返還請求は認められるのか?
近年、深刻な人手不足に悩む運送業界において、免許取得支援制度を設ける企業が増えています。
例えば、大型免許の取得費用は、30万前後です。
しかし、せっかく会社が費用を負担して取得した免許を活かすことなく、
すぐに転職してしまうドライバーも少なくありません。
このような場合、
会社は投資した費用を回収するために、取得費用を返還させることはできるのでしょうか?

結論から言えば、一概に返還を要求することはできません。返還が認められるかどうかは、
「会社の業務命令」か「ドライバーの自由意思によるもの」なのかによって、結論は変わります。
1. 会社の業務命令による取得
会社が業務遂行のために必要と判断し、 ドライバーに大型免許取得を命令した場合、
取得費用は会社の業務遂行に必要な経費となります。
そのため、ドライバーが退職した場合でも、返還を求めることは認められません。
仮に、就業規則などで「一定期間勤務せず退職する場合には免許取得費用を返還する」旨を定めたとしても、
その規程は労働基準法16条違反となります。
業務命令による取得と判断される場合の例
- 大型トラックの運転手が不足しており、新規採用時に大型免許取得を条件とした場合
- 既存のドライバーに対して、大型トラックの運行拡大に伴い、大型免許取得を命令した場合
- 将来的に大型トラックの運行比率を高めることを目的とし、全ドライバーに対して大型免許取得を命令した場合
2. ドライバーの任意による取得
ドライバー自身がキャリアアップやスキルアップのために、 会社からの命令なく任意に大型免許を取得した場合、
取得費用はドライバーの個人的な支出となります。
この場合、会社とドライバーとの間で金銭消費貸借契約を締結し、「会社がドライバーにその費用を貸し付けた」ということにして、
一定期間勤務したら返還免除という形をとるのは問題ありません。
金銭消費貸借契約とは、一方当事者が相手方に金銭を貸し、相手方が一定期間後に返済する契約です。
金銭消費貸借契約による取得と判断される場合の例
- ドライバー自身が、将来のキャリアアップのために大型免許を任意に取得する場合
- 大型トラックの運転に興味があり、大型免許を任意に取得する場合
- 将来的に独立開業することを目指し、大型免許を任意に取得する場合
しかし、一概にすべて金銭貸借契約が有効となるわけではありません。
- 返還免除基準は妥当か
- 返還額や方式は妥当か
等も総合的に考慮して判断されています。
1.返還免除基準は妥当か
免除期間が長すぎる場合は、不当拘束になり、労働基準法16条違反となりますから注意が必要です。
下記のように、段階的に免除割合を設定し、資格取得後1年~3年程度の勤務
をもって全額を免除する仕組みを設けることができます。
<貸付費用免除の段階例>
資格取得後の継続勤務期間 免除の割合
満1年以下 ・・・免除の割合0%
満1年超2年以下・・・免除の割合 1/3
満2年超3年以下 ・・・免除の割合50%
満3年超 ・・・免除の割合100%
2.返還額や方式は妥当か
免除期間中に、退職する場合は、返還額を最後の給与から控除することが考えられますが、
その場合には、ドライバーの自由意思にもとづく給与控除の合意が必要です。
運送会社における大型免許取得支援制度の導入事例
これらの制度を導入することで、会社は優秀なドライバーの確保や定着率向上を期待することができます。
一方で、制度の内容によっては、労働基準法に抵触する可能性もあるので、導入にあたっては専門家の意見を聞くことが重要です
